動物販売時説明書(犬)

 

この説明書は、動物の健康及び安全の確保並びに危害又は迷惑等の防止が図られるように、動物の愛護及び管理に関する法律施行規則に基づき、動物の購入の契約に当たって、あらかじめ購入動物の特性及び状態に関する説明及び説明書の交付を行うために作成したものです。十分な理解のもと適正に飼養保管されますようお願いします。

 

●ご購入の犬種に応じて犬種別の特性をお読みください。

 

●飼養施設、用具及び環境

(1)使用施設、用具

飼養施設は、動物の大きさや習性に応じた十分な広さを備えたものを用意しましょう。排泄設備、隠れ場、遊具等も必要です。また、清掃等が容易で、逃げ出したりしない構造のもの、突起物より傷害等を受ける恐れがないものを選びましょう。

犬舎(ゲージ)、首輪、リード、食器、水入れ、寝床、トイレ、ブラシ、遊び具など

 

(2)清掃等

動物の健康と安全を守るため、定期的に掃除や消毒を行い、適切な衛生状態を維持しましょう。

トイレの清掃は1日1回以上、犬舎や食器の清掃は汚れの程度を見て必要に応じて実施

 

(3)環境

適切な日照や通風等の確保を図り、適切な温度や湿度が維持された飼養環境を確保しましょう。

危険物や毒になるものの管理をしっかりする(また、室内での排便。排尿のしつけをするとともにできる限り不妊・去勢手術を行うことも留意)

 

●食事と栄養管理

(1)食事の種類

ドッグフード(総合栄養食)や自家製の犬専用の食事(必要な栄養が人とは異なるので注意が必要)

 

(2)食事の回数や量

1日2回(幼齢期は4〜5回)。量は、体重あたりの量を基本にして、犬の体重の変化や体の調子、便の状態などを見ながら調整

 

(3)飲み水

いつでも新鮮な水が飲めるように、給水器をとりつけましょう

 

(4)注意すること

動物によっては、与えてはいけない食べ物があるので注意がひつようです。また、与えすぎによる肥満も、動物の健康にとっては好ましくありません。

@     人の食べ物は欲しがっても与えないこと。犬と人とは体のつくりや必要な栄養バランスが違うので、病気の元になるとともに、しつけの上でもよくない。

A     食事は時間を決めて与え、残したときはすぐに片付けること。食べ残しを放置すると腐敗し、衛生上よくないとともに、いつでも好きなときに食べられる状況はしつけの上でもよくない

B     魚の骨や鳥の骨、チョコレート、タマネギ、ネギ類は与えないこと。魚の骨や鳥の骨は腸を傷つけることがあり、タマネギやネギ類は、死に至る重症の貧血を起こすことがある。また、牛乳は下痢をすることがある。

 

●運動及び休養

動物の習性に応じた必要な運動、休息及び睡眠を確保するようにしましょう

@     一定の時間帯に散歩又は室内自由運動する。ただし、犬は汗をかけず、焼けた路面で火傷をする場合もあるので、夏場の暑い時間の散歩は避けること。

A     必要な運動量は、犬種、年齢などによって異なる。大まかな目安として、小型犬で朝夕10〜20分。なお、子犬や老犬には無理をさせないこと。

B     散歩の時は必ずリードをつなぎ、ふん処理の道具を携行して持ち帰ること。排泄を済ませてから散歩に出るような配慮も必要。

 

●しつけ

動物が家庭や人間社会のなかで一緒に生活していくためのルールを教えることがしつけです。訓練や芸をさせることではありません。しつけのコツは叱るのではなく、ほめる、それもできるだけおおげさにほめて教えることと、根気よく教えることです。体罰、大声、おどしは絶対に避けるようにしてください。

@     基本は、人が常にリーダーシップをとって犬の行動をコントロールすること。そのためには、犬に主従関係をしっかり認識させ、理想的には犬には家族の最下位に位置するよう接すれば、家族の要求に従う犬に育つ。

A     基本的な号令には、オスワリ、フセ、マテ、オイデ、ツケなどがある。

 

 

 

●手入れ

動物の健康を保つためには、日頃のお手入れが大切です。体中をくまなく触ることは、病気や以上の早期発見につながります。また、飼い主が犬の体をくまなく触ることは、スキンシップを図るとともにリーダーシップを示すことにもなり、しつけのトラブルの未然防止にもなります。

@     ブラッシング:汚れや抜け毛を取り除き、つやのある毛にすると同時に、皮膚の血行をよくする。運動の後に、まず毛並みに逆らってブラシをかけて汚れを浮かし、次に毛並みにそってブラッシングしてやる。特に、毛の抜け替わる時期には、たんねんなブラッシングが必要。長い毛の犬はブラッシングを怠ると、毛玉ができて手がつけられなくなってしまう。また、犬種によっては定期的なカットが必要。

A     シャンプー:回数は飼う場所や毛の長さなどによって異なる。一般的には1ヶ月に1回程度。

B     つめ切り:室内飼いの小型犬はもとより、十分に散歩している犬でも親指のつめは地面につかないので伸びてしまう。伸びすぎたつめを放置すると、毛布などにからまり、つめを折ったりはがしたりすることがある。

C     耳の手入れ:耳の中のチェックが時々必要。健康な犬では、耳垢はわずかでほとんど臭わない。臭いがきつかったり黒い耳垢がたまっている時は、獣医師に相談が必要。綿棒などでのふき取りは、耳の粘膜を傷つけ、汚れを押し込むことになるのでよくない。

D     歯の手入れ:犬用の歯ブラシや、ガーゼを巻いた指で歯と歯茎をこすってやる。奥歯の外側が歯石のつきやすい場所。歯石を放置しておくと歯肉炎、歯槽膿漏と病気が進行する。歯が悪いと口臭がきついばかりでなく、心臓や腎臓などの病気の原因になる恐れが高くなる。

 

●病気

(1)かかりやすい主な病気

動物の種や品種によりかかりやすい病気があります。

@     腸管内寄生虫病(回虫、鉤虫、条虫など):下痢や食欲不振などが主な症状。放っておくと死亡することもある。多くは便の虫卵検査で診断。寄生虫の種類に応じて駆虫薬の投与により駆虫できる。

A     パルボウイルス感染症:嘔吐、下痢が主な症状。子犬では発病してから1〜2日のうちに死亡。予防ワクチンがあるので、生後2〜3ヶ月になったら接種する

B     犬フィラリア症:そうめん状の細かい虫が心臓や肺動脈の中に寄生する病気。蚊に刺されることで感染。寄生数が多いと心臓の機能に障害を与え、放っておくと心不全で死亡することもある。飲み薬などで予防できる。

 

 

(2)人と動物との共通感染症

動物から人へ、人から動物へとうつる病気を、人と動物との共通感染症といい、200種類以上あるといわれています。主な共通感染症及び犬にかかりやすい感染症には次のようなものがあります。

     犬:パスツレラ症、皮膚糸状菌症、回虫症、狂犬病など

@     感染した犬などの動物に噛まれてうつると恐ろしい病気。温血動物はすべて感染する。現代でも治療法はなく、人も動物も発症すると100%死亡。日本では昭和32年以降流行はないが、世界では現在でもほとんどの国(地域)で発生し、年間約3万人以上の人が死亡。

A     皮膚糸状菌症、かいせん症、白癬菌症:糸状菌(カビの仲間)や、かいせん(ダニの一種)による皮膚病は、人にもうつることがある。また、人の水虫(白癬菌症)は人から犬にうつることがある。

B     エキノコックス症(多包条虫):本来、キツネとノネズミの間で感染している寄生虫病。犬はノネズミを食べることで感染、ほとんど症状を示さない。虫卵が人の口に入ると、子虫が肝臓などに寄生して、長い年月の後に肝障害などの症状を起こす。流行地は北海道なので、犬を連れて旅行するときは、犬がノネズミなどを食べないように気を付けることが必要。犬に寄生したエキノコックスは薬で駆除できる。

 

(3)健康管理と予防方法

動物がかかる病気は、感染症、腫瘍、生活習慣病など人と同じようにたくさんあります。病気を早期に発見するためには、常に元気・食欲・尿や便の状態などに注意しているこが必要です。良いホームドクター(獣医師)を決めて、様子がおかしいときは早めに受診しましょう。なお、病気になったときにあわてるより、普段からバランスの取れた食事や適量の運動に気をつけ、ワクチンや薬で予防する事が一番なのはいうまででもありません。

また、共通感染症を予防する為には、口うつしで食べ物を与えるなどの過度の接触をしない、ふん尿は早めに処理する、動物の体や生活環境を清潔にする、動物の体に触れたりふん尿を扱った後はよく手を洗う、などのことを守り、衛生的な飼い方を心がけていれば、必要以上に恐れる事はありません。そして、普段から動物の健康状態に注意して、具合がおかしいと思ったら、早めに獣医師に相談してください。また、飼い主自身や家族の健康状態にも注意し、以上があれば、医師に相談してください。

 

●不妊・去勢措置等

飼養頭数が増えて、適切な飼養管理ができなくなってしまった場合には、動物を劣悪な飼養環境下に置いて虐待することとなるだけでなく、人に迷惑や被害等を及ぼしたり、遺棄や虐待等の違法な事例を発生させる事となります。動物が繁殖し、飼養数が増加しても適切に飼養できる場合以外は、できる限り繁殖を制限するように努めましょう。繁殖を制限する主な方法としては、去勢手術(数千円〜数万円)、不妊手術(数万円)、雌雄の分別飼育などがあります。不妊去勢手術は、一般的には大人になる前に行う方が望ましいとされており、その効果としてはみだりな繁殖を防止するだけでなく、性格が穏やかになってしつけがしやすくなること、発情期のストレスを軽減できること、子宮蓄膿症等の病気を予防できる事等があげられています。なお、デメリットとしては肥満やホルモン失調が認められる場合があること等があげられています。

 

●その他

・固体識別と終生飼養:マイクロチップ等による固体識別装置による所有者の明示と終生飼養は、飼い主の愛情と責任の証です

     小型犬の平均寿命は9〜12歳です(生活環境により18歳まで生きる個体もあり)

     本説明書は必要最低限のことについて記載したものです。飼養保管方法の詳細については、専門の飼育書等をご参照下さいますようお願いいたします。

 

●動物の愛護及び管理に冠する法律(動物愛護管理法)

(1)次の規則を守る事が義務付けられています。守らない場合には懲役刑や罰金等が課せられます。

 @愛護動物のみだりな殺傷、虐待又は遺棄の禁止

 

(2)飼い主の責任として、次の事を守るように勤めることとされています。

 @動物を「命あるもの」と認識し、みだりに殺し、傷つけ、苦しめないこと(基本原則)

 A動物の種類、習性等に応じて適正に飼養保管し、動物の健康及び安全を確保すること(健康等の確保)

 B動物が人の生命・身体・財産に危害を加え、人に迷惑を及ぼさないようにすること(危害や迷惑等の防止)

 C動物に起因する感染症について正しい知識を持ち、予防に必要な注意を払うこと(人と動物との共通感染症の予防)

 D動物の所有者を明らかにするため、マイクロチップ等による固体識別措置をすること(所有者の明示)

 E「家庭動物等の飼養及び保管に冠する基準」を遵守すること

 Fみだりな繁殖により適正飼養が困難にならないように、必要に応じて不妊去勢手術等を行う事(繁殖制限)

 

●狂犬病予防法

次の寄生を守ることが義務付けられています。守らない場合には、罰金等が課せられます。@犬を飼い始めてから(幼齢犬は生後90日になったら)30日以内に、市区町村長に登録を行う事。

A生後91日以上の犬には毎年1回、狂犬病の予防注射を受けされること。

B鑑札及び注射済票を犬につけておくこと。

C犬が死亡したとき、登録内容に変更があったときは、30日以内に市区町村長に届けること。